ITエンジニアは人手不足と言われています。それ自体は事実なのですが、未経験者がIT業界を目指してみると、門前払いにされてしまうことが多いです。人手不足でありながらも人手が余っている実態もあるのです。これは一体なぜなのでしょうか。
IT業界の人手不足の現状とその影響
IT業界の人手不足は、国内外で深刻化しており、特にインフラエンジニアやクラウド・セキュリティ分野で顕著です。現状とその影響を整理すると以下の通りです。
1️⃣ 現状
- 慢性的な人手不足
- 経済産業省やIPAの調査によると、IT人材不足は数十万人規模
- 特に インフラ運用・監視、ネットワーク構築、クラウド、セキュリティ に人材不足が集中
- 高齢化・経験者不足
- 熟練のインフラ技術者の高齢化が進み、即戦力の採用が難しい
- 新卒や未経験者の育成が急務
- 女性比率の低さも影響
- 女性エンジニアは全体の20%前後で少数派
- 多様な人材確保の観点からも女性採用の重要性が増している
2️⃣ 人手不足の影響
(1) 業務負荷の増加
- 既存社員への業務集中、残業や夜勤が増加
- 運用・監視や障害対応の負担が大きく、離職リスクも上昇
(2) 採用・育成コストの増加
- 経験者の採用単価が上昇
- 未経験者育成のための研修・サポート体制の強化が必要
(3) 新規技術導入やプロジェクトへの影響
- クラウド、セキュリティ、DXプロジェクトへの対応が遅れる
- スキル不足により、外部ベンダーや派遣依存が増加
(4) キャリア機会の拡大
- 人手不足は逆に未経験者や女性、他業種からの転職希望者にチャンス
- 資格やスキルを持つ人材は市場価値が高く、好条件で採用されやすい
3️⃣ 今後の動向
- リモートワーク・フレックス勤務の増加で人材確保を推進
- AI・自動化ツールの活用で運用・監視の効率化
- 女性や未経験者、シニア層の採用を拡大し、多様な人材で不足を補う
IT人手不足の原因を探る
IT人手不足の原因は多面的で、需要の急増、スキルギャップ、教育・育成の遅れ、業務負荷、働き方の制約などが複合的に絡んでいます。整理すると以下のようになります。
1️⃣ 需要の急増
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
- 企業のクラウド移行、デジタルサービス開発が急増
- インフラ・クラウド・セキュリティの人材需要が急拡大
- 新技術導入のスピード
- AI、IoT、クラウド、セキュリティ対策など新技術への対応が追いつかない
- 需要に対して供給が追いつかず、人材不足が顕著
2️⃣ スキルギャップ
- 即戦力の不足
- 特にクラウド構築、ネットワーク設計、セキュリティ対策の経験者が不足
- 若手や未経験者は基礎スキルはあっても即戦力になりにくい
- 専門性の高度化
- 単なる運用経験だけでは不十分で、構築・設計や自動化・クラウドスキルが求められる
- 経験者とのギャップが広がっている
3️⃣ 教育・育成の遅れ
- 教育投資不足
- 未経験者・若手向けの研修やOJTが不十分
- 効率的な育成体制が整っていない企業が多い
- 資格取得やスキルアップの機会不足
- 現場任せで体系的にスキルを習得できないケースがある
4️⃣ 業務負荷・働き方の制約
- 夜勤・長時間勤務の常態化
- 運用・監視業務の負荷が高く、離職につながる
- 特に女性やライフイベントを考慮する層が働きにくい環境
- ワークライフバランスの取りにくさ
- 長時間労働や夜勤の負担により人材が定着しにくい
5️⃣ 社会的・構造的要因
- 女性・シニア・未経験者の参入が進みにくい
- 男性中心の職場文化や夜勤業務が障壁になっている
- 多様な人材の活用が進んでいない
- 人口減少・若手不足
- IT業界だけでなく、労働人口全体の減少が影響

IT業界の人手不足は自業自得か?
「IT業界の人手不足は自業自得か?」という問いは、一見単純ですが、慎重に分析する必要があります。結論から言うと “完全に自業自得ではない” が、業界側の構造的問題も関係している、というのが現実です。整理すると以下の通りです。
1️⃣ 自業自得とされる側面
- 過去の投資不足
- 未経験者・若手の育成や教育に十分な投資をしてこなかった企業が多い
- OJT・研修が不十分で、経験者に負担が集中
- 働き方・環境の改善が遅れた
- 夜勤・長時間勤務や男性中心の文化が定着
- ワークライフバランスや女性・シニア層への配慮が不十分
- 給与・待遇が市場に追いついていない
- 高度なスキルを求める割に報酬が低い場合があり、人材流出を招いた
2️⃣ 自業自得ではない側面
- 需要の急増
- DXやクラウド、セキュリティ対応の急増は、企業の予測を超えている
- 短期間で人材を増やすことは現実的に難しい
- 技術の高度化
- 求められるスキルの専門性が高く、即戦力を短期間で確保するのが困難
- 人口減少・労働市場の制約
- 若手労働人口の減少や、IT業界全体の供給不足も影響
- 社会的要因
- 女性や未経験者、シニア層の参入が進みにくい構造も背景にある
3️⃣ 総合評価
- 人手不足の原因は半分自業自得、半分は構造的要因
- 自業自得:過去の教育・育成・働き方の改善不足
- 構造的:需要急増・人口減少・専門性の高度化
- 言い換えれば、業界の努力で改善可能な部分と、時間や政策でしか解決できない部分がある
今後のIT人材需要の予測
最近のデータやトレンドから、「今後のIT人材需要」の見通しについて、現時点で言える予測と論点を整理します。
・デジタル化/DX/AIの拡大
- 日本では多くの企業が IPA(情報処理推進機構)が指摘するように、デジタルトランスフォーメーション (DX) を進めておらず、「DX 人材が不足」と報告されています。
- また、ランスタッド の2025年レポートなどからは、サイバーセキュリティ、クラウド、AI/データ、先端テクノロジーまわりの需要が「爆発的に増加」しているという報告もあります。
- 加えて、古い業務系システムの大規模なリプレイス/クラウド移行や、老朽化した基幹システムの更新ニーズの高まりが、「インフラ・運用・設計」人材需要を喚起すると見られています。
→ つまり、単なるIT・ソフトウェア開発だけでなく、インフラ/クラウド/セキュリティ/運用など幅広い分野で「人材需要拡大」の流れが続くと予想されます。
・中長期での人材ギャップ拡大の予測
- 最近のレポートでは、2040年までに日本の IT 人材は最大で約 73.3 万人不足 に陥る可能性がある、という試算が出ています。
- つまり、IT 需要の増加に対し、供給(就業者数・転職者・育成)が追いつかなければ、人材不足が構造化する見込み。
・人材の流動性と採用競争の激化
- 直近の調査では、国内の IT/テック系プロフェッショナルのうち 55% が今後 12 か月以内に転職または契約形態への移行を検討している、というデータもあります。
- それと同時に、多くの企業が「スキル不足」「人材不足」を感じており、求人倍率も非常に高い水準が続いています。
- これにより、スキルや専門性を持った人材への競争は今後さらに激化する — つまり「スキルを持つ人」がより求められるようになる可能性が高いです。
🔎 どの分野の人材が特に需要が高まるか
- クラウド/インフラ設計・運用 — 既存システムのクラウド移行、モダナイゼーション、データセンター運用など
- サイバーセキュリティ — サイバー攻撃リスクの増大、セキュリティ統制・監査、セキュリティ設計など
- AI/データ/機械学習まわり — AI 活用、データ分析、機械学習基盤運用など。AI の普及でデータ基盤や運用が重要になるため。
- プロジェクト管理・マネジメント/クラウド専門職 — 技術だけでなく、全体を見渡せる人材、あるいは複数技術をまたげる“橋渡し型”人材の需要も増加。

企業が取るべき対策
IT業界の人手不足を受けて、企業が取るべき対策は 採用・育成・働き方・業務効率化・多様性推進 の5つの柱に整理できます。特にインフラ・運用・クラウド分野では即戦力不足が深刻なため、戦略的な対応が求められます。
1️⃣ 採用戦略の見直し
- 未経験者・女性・シニア層の積極採用
- 夜勤回避やリモート勤務など柔軟な働き方を条件に採用
- 女性エンジニア向けコミュニティや勉強会からの採用ルート活用
- 中途採用・ヘッドハンティングの活用
- クラウド・セキュリティなどの即戦力人材を外部から確保
- リファラル採用(社員紹介)を強化
2️⃣ 教育・育成の強化
- 未経験者向け研修・OJTの充実
- Linux/Windowsサーバ、ネットワーク、クラウド基礎の体系的教育
- 運用→構築→設計と段階的にステップアップできるカリキュラム
- 資格取得支援
- CCNA、LPIC、AWS認定資格、セキュリティ系資格の取得支援
- 自宅学習・オンライン学習の費用補助
3️⃣ 働き方の柔軟化
- 夜勤・シフト勤務の最適化
- 夜勤は交代制や短時間シフト化
- 希望者だけが担当できる柔軟な制度
- リモート・フレックス勤務の導入
- 運用や監視はクラウドや自動化を活用して在宅対応可能
- 女性や育児中社員の離職防止にもつながる
4️⃣ 業務効率化・自動化
- 自動化ツール・監視ツールの導入
- 障害検知・対応・レポート作成の自動化
- 単純作業を減らして人材負担を軽減
- クラウド利用・インフラ運用の標準化
- IaC(Infrastructure as Code)やクラウドマネジメントで効率化
- 熟練者でなくても運用可能な環境を整備
5️⃣ 多様性・職場環境の改善
- 女性・シニア・外国人の活躍推進
- ロールモデルを増やしキャリアイメージを描きやすく
- ダイバーシティ推進で採用範囲を広げる
- 職場文化改善
- 男性中心文化や過度な長時間労働を是正
- 評価制度をスキル・成果ベースに変更
IT業界転職を考える人へのアドバイス
IT業界への転職を考える人へのアドバイスは、準備・スキル・市場理解・キャリア戦略・ライフスタイル調整の5つの視点で整理できます。特に未経験者や女性が転職する場合は、チャンスと注意点を把握して計画的に行動することが重要です。
1️⃣ 事前準備:業界・職種の理解
- IT業界の構造を理解する
- インフラ(ネットワーク、サーバ、クラウド)、開発、運用、セキュリティ、AI・データなど分野ごとの仕事内容を把握
- 夜勤の有無や残業の傾向、職場文化も確認
- 企業選びの基準を明確化
- 働き方(夜勤回避、リモート勤務可)
- 育成・研修制度
- ダイバーシティや女性活躍推進
2️⃣ スキル・資格の習得
- 基礎スキルを身につける
- Linux/Windowsサーバ、ネットワーク基礎、クラウド入門(AWS, Azure, GCP)
- Pythonなどの簡単なスクリプトで自動化も習得できると強み
- 資格取得で信頼性をアピール
- ネットワーク:CCNA
- サーバ/OS:LPIC Level1
- クラウド:AWS Certified Cloud Practitioner
- セキュリティ:CompTIA Security+
3️⃣ 市場理解:需要と人手不足の状況
- 人手不足をチャンスに変える
- ITインフラ、クラウド、セキュリティ分野は慢性的な人材不足
- 未経験・女性でも学習意欲や資格があれば採用されやすい
- スキルがないと選ばれにくい点に注意
- 自己流の学習だけでは、即戦力を求める企業では不利
- 基礎+資格+簡単な実践経験を組み合わせると転職成功率が上がる
4️⃣ キャリア戦略を描く
- 短期目標
- 運用・監視などの未経験枠で経験を積む
- 夜勤や体力負担の少ないポジションを狙う
- 中期目標
- 構築・設計、クラウド専門職へスキルアップ
- 資格や小規模プロジェクトで実績を作る
- 長期目標
- 上流工程やマネジメント、専門職で安定したキャリアを確立
- ライフステージに合わせた働き方(時短勤務・リモートなど)
5️⃣ ライフスタイル・環境との調整
- 夜勤・残業の負担を確認
- 女性や育児中の人は、夜勤回避・リモート勤務が可能な職場を優先
- コミュニティ・相談窓口を活用
- 女性エンジニアコミュニティ、キャリア相談、勉強会で情報収集
- ロールモデルやメンターを確保することでキャリア設計がしやすくなる
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